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TRAINING・SUPPORT研修・勉強会

医療みらい創生機構 NABARI FUTURE TOUR -2日目-

三重県名張市
研修

医療みらい創生機構が開催するFUTURE TOUR。

今回は『健康と食から考えるまちづくり』をテーマに三重県名張市を視察する。
今回ツアー初となる宇田川常務、長尾事務長と共に私、篠原が参加させていただいた。

医療みらい創生機構 NABARI FUTURE TOUR -2日目-

昨日予定を変更して伺う事が出来なかった奥田ゴールドファームの視察のため当初の予定より1時間早い8:50に集合になったため、些か二日酔いの身体にムチを打ち、5時半に起床し温泉へ向かう。

広大な露天風呂にスッカリ癒され奥田ゴールドファームへ向かった。 奥田ゴールドファームは昨日懇親会会場となった「焼き肉レストラン奥田」の店主の弟さんが運営する農場。

 

農場というと住宅街からはかけ離れた広大な敷地を想像する方が多いだろう。
しかし奥田ファームは住宅街のど真ん中にある。

 

「周辺住民から臭い等の苦情は来ないのだろうか?」そんな疑問が皆さんの頭の中にも浮かんだはずだ。 観光バスが入れないような市街地にあるため、バスを降りて歩いて農場に向かう。

 

バスから奥田ゴールドファームまで

 

民家が建ち並ぶ中、突如牛小屋が現れる。

驚くことに農場のあの独特な臭いがしない。

これは牛に契約農家で収穫された稲わらと厳選した飼料を季節に合わせて独自ブレンドする事により、牛の腸内環境を整える事できちんとエサが消化されるため糞が臭くならないとのことだ。

腸内環境を整える事の恩恵は糞が臭わなくなるだけではない。

牛の免疫力が上がり病気をしにくくなり抗生物質の投与を減らせ、寿命が延びるだけでなく繁殖可能期間が、一般的な飼育をされた牛よりもかなり長いという。これは潰瘍性大腸炎やアレルギー疾患などの患者に健常者の便(腸内細菌)を移植する事で疾患が治癒すると話題となっている治療法「便移植」も同じ事が言えるだろう。

 

現代の牛の飼育で一般的なのは太らせるために狭い牛舎の中で雑穀をたくさん食べさせ、病気がちなので抗生物質を大量に投与される。

アメリカでは太らせるためにホルモン注射を打つ場合もあるという。

繁殖に関してもそのほとんどが人口的な場合が多く血統牛の精子を高い値段で購入し、繁殖牛に受精させる。 利益と効率化を重視し、生物を扱う「農場」というよりモノを扱う「工場」に近い。

しかしこれが悪というわけでない。 農家はどこも人手が不足で、穀物の高騰も重なり、経営は厳しいところがほとんどで、やむを得ず離農する農家も少なくない。

奥田社長の話だとかなりの人が牛舎で首を吊っているなど怖い話もあった。
生き残るために大手の買い付け業者の言うマニュアル通りに牛を育てているのだ。

 

このような運営方法とは真逆と言って良い方法をとっているのがこの奥田ファームだ。
上述したようにエサにこだわり、無理に太らせるような事はしない。

交配に関しても自然交配を主としている。 できる限り牛の生態にあった自然な飼育をすることで、健康で美味しい肉牛になる事を目指す。

 

奥田社長の話す内容はとても刺激的であり、現在の酪農・畜産のあり方に一石を投じるその姿は農業界の北原理事長と言っても過言ではないように感じた。
立ったまま牛舎の中で1時間以上にも及ぶお話だったが、驚くほどあっという間に時間が過ぎ、むしろ時間が足りないと感じるほどの内容であった。

 

奥田ゴールドファーム
奥田ゴールドファーム
厳選した飼料
厳選した飼料

 

時間の都合で名残惜しい気持ちの中、次の目的地へ向かった。

 

次に向かったのはジビエ解体体験だ。

個人的には今回のツアーで一番楽しみにしていた内容でもある。

この「ジビエ料理」今でこそ耳にした方も多いだろう。

実は多くの自然に囲まれるこの名張市は近年シカやイノシシ、猿などの獣害が深刻化している。
またお隣、奈良県はシカは神の使いという事で捕獲しないことから山を越え、その数は年々増加しているという。 多くの害獣が捕獲され殺処分されているが、有効に使うことはできないかと考え、たどり着いたのがこの「ジビエ料理」だ。

もちろん昔から駆除されたシカなどは食べられていたが、処理の難しさや品質・供給量の不安定さから商業ベースに発展させるのまでは至らなかった それをある程度商業ベースまで発展させたのが「みえジビエ」だ。

さすがに大手の流通に乗るまでは供給できていないが、中小の小売店や名張市内の期間限定ではあるがカレーハウスCoCo壱番屋でもジビエ料理が食べられるまでになった。

 

シカ丸々の解体から体験できると期待していたのだが、上述したように鹿肉などは捕獲後すぐに血抜き・皮剥などの処置をし、適正温度で保管しないと食べられなくなってしまうため、脚の解体及び試食という内容であった。

この解体が思ったより難しい。

骨から肉を切りわけていくのだが普段手にすることのない巨大な肉塊を扱うのに苦戦している参加者多い中、さすがは外科医の北原理事長はあっという間に一口大に切り分けていた。

 

 

肝心の味はというと・・。
意外に美味しい。

 

もっと硬く獣臭いのを想像していたが、全くと言って良いほど食べにくさはなかった。

名張のシカは家畜ではないので季節により食べているものが変わるため、捕獲時期により肉質も大きく変化する。

ちょうど10月くらいが一番美味しい肉質で紅葉鍋が出回るのもこの頃という。

今回は軽く焼いただけだったが、いつかは美味しい紅葉鍋を食したいものだ。
思いの外美味なジビエに「試食」どころかりっぱな「食事」をしてしまった一行は次の目的地ハッピーウエルネスへ向かった。

 

ハッピーウエルネスは2017年に開設された「サービス付き高齢者向け住宅」「リハビリ付きデイサービス」「カフェダイニング」そして「保育園」が併設された施設である。 コンセプトはま「ライフスタイル提案型の複合施設」。

上記の施設以外に農園や牧場もあり、3世代(今は4世代となりつつある)が集える場所となっている。

 


 

このハッピーウエルネスの代表である福森暁氏。

この複合施設だけでなく海外事業や再生医療のプロジェクトなど多種多様な事業を手がけている。
そして歯科医師としての顔も持つ。

ツアー参加者からは「なぜ歯科医師でこのような事業をやろうとしたのか?」
そんな質問があがる。

おそらく福森氏はこのような質問を何百回と聞かれたのだろう。
少し怪訝そうに「逆に歯科医師がこんな事をやったらダメですか?」と切り返す。

医師である北原理事長も同じような質問受けた記憶があるのか人ごとでは無いようだ。
理事長や福原氏にとって「医師」や「歯科医師」というのはあくまで免許取得してできる仕事の一つで有り、「特別な」ものではないようだ。

「医師だからこういう事をしなければ」などという固まった考えではないのだろう。

 

併設されたカフェダイニングで昼食をとった後、最後の視察先「NPO法人 あぐりの杜」へ向かった。

 

あぐりの杜は農園芸時事業・福祉事業・観光事業をベースに「人と地域の活性化」メーンテーマに活動している。

観光事業としては山と古民家を買い取り、地域の子供や学生に教育兼遊びの場として提供している。

 

最初に案内されたのはその山と古民家だ。

観光事業と言っても無造作に切り開かれた竹林と到底人が寝泊まり出来ない今にも崩れかけそうな古民家(というより廃屋に近い)があるだけで、整備された遊具などは何もない。

あぐりの杜、代表井上氏はまず我々にこう問う。

「ここはどんな風に見えますか?」
「大概の大人は何もないところと言います。でも私にはワクワクがいっぱいの場所に見えて仕方がありません」と続ける。

実際、ここが観光事業?と首をかしげたくなうような場所だ。

しかし子供達に「ここで自由に遊んでよいよ」というと喜んで駆け回り、無造作に並ぶ切り株で遊んだり、竹林を触ったりと無限大の遊び方をするという。 確かに大人が整備したアスレチックをいくら森の中で遊んだところで本当の意味での「自然に触れ・自然の中で遊んでいる」とは言えないかもしれない。

 

 

次に向かったのはこの団体が運営する福祉事業の事務所だ。

農業と福祉事業を連携させ平成26年に三重県の許可を受け就労継続支援B型事業所を運営している。

身体・知能・精神と様々な障がいを持つ方に水耕栽培農業を中心に就労支援を行っている。

ボランティアとしてではなくきちんと経営的に黒字になっているという。
これは一般的な土壌農業ではなく水耕栽培に絞ったことが黒字の最大の要因のようだ。

水耕栽培は土壌栽培に比べマニュアル化しやすくイレギュラーな事が起こりにくい。

また作業を細分化しやすく、様々な事を同時にこなすことが困難な場合が多い障がい者に適した方法と言える。

一人一人に合う仕事を見つけ辛抱強く教えることで、種を蒔くエキスパート、採取するエキスパート、プレートを洗うエキスパートなど適材適所の仕事を与える。

 

もちろん最初から運営が上手くいっていた訳ではない。 上述したように「障がい者」と一口に言っても障がいの種類や重さはバラバラだ。 障がい者間でのトラブルも少なくなかったという。 そんな困難を乗り越え今ではアグリー農園の野菜を是非売りたい・使いたいという業者も多いという。言い方が適切かどうかは分らないが「障がい者の方が作った野菜」という事を売り文句にはしていないため消費者が「ここの野菜美味しいけどどうやって作っているの?」という質問がきて初めて「実は障がいを持った方達が作っています」と答えると井上氏は言う。

 

個人的には「障がいを持った人が頑張って作っています!」のような謳い文句には疑問を感じていたので、井上氏のこの発言に対しては共感できる部分があった。

この「あぐりの杜」という団体名の「あぐり」は農業を意味する「Agriculture」と賛成・同意を意味する「agree」からきていると言う。 これは、障がいを持つ方と健常者が一緒に働くためにはお互いが「否定」しあうのではなく、互いに「agree」が必要という想い井上氏の想いが込められている。

時間の都合上、実際の農園見学や試食は出来なかったのは心残りであった。

 

最後の視察先を後にし、帰路につく。

福翔会(ハッピーウェルネスの運営法人)の粋な計らいにより、地元名張の銘酒の差し入れがあり、車中は瞬く間に宴会会場となった。

そんな中、恒例となっている参加者の感想を一人ずつ述べていく。

さすがは我らの宇田川常務。行きのバスでの自己紹介も見事だったが、感想も素晴らしくあまり大勢の前で話すことが得意ではない私にとっては心強い存在だった。

残念なことに素晴らしい事をおっしゃっていたということだけは覚えているのだが、肝心の内容については私に名張の銘酒の影響が色濃く出てしまったためここでは割愛させて頂きたい。

 

名古屋駅までのサービスエリアにて
名古屋駅までのサービスエリアにて

 

当初の予定では18時半に名古屋駅解散予定だったが往路を上回る大渋滞で9時近くに名古屋駅到着になった。

 

正味40時間ほどの滞在だったが名古屋駅に再度降り立つのが数週間前にも感じるほど充実した2日間であった。

 

「農業者たる前に人間たれ」これは愛農学園創立者・小谷氏の言葉であるが、少し拝借して

 

「医療人たる前に人間たれ」

 

まさに人々の健康に私個人がどのように関わる事ができるのかきちんとした考えを持ち、この課題に取り組んでいきたい。

末尾ながらこのような機会を与えてくださった長尾社長、初参加ながらフォローしてくださった宇田川常務、前日から私に同行してくださった長尾事務長、そして素晴らしいツアーを企画してくださった北原理事長を始めとする事務局の方々、本当に有り難うございました。

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