第12回 日本在宅薬学会学術大会 2019 in 名古屋
場所 | 愛知県名古屋市(名古屋国際会議場) |
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日付 | 2019年7月14日(日)・15日(月) |
参加 | 11名 |
参加者のレポート
一ノ瀬 久美子(あい薬局)
参加した講演 (日帰りのため7月14日のみ参加)
- 大会会長講演「地域包括ケア時代の『在宅薬学』
- 基調講演「超高齢化社会への対応 疾患の性質変化と医療の在り方
- ランチョンセミナー「在宅診療に役立つ漢方薬の治療戦略 様々な服薬工夫の実践例も含めて
- シンポジウム1 「入退院時におけるシームレスな薬物治療支援について」
- 特別講演「今後の薬局・薬剤師に期待すること ~次期調剤報酬改定に向けて~」
- ポスター閲覧
感想・今後の課題
あい薬局にて在宅業務を始めて1年。以前正社員として勤めていた薬局でも在宅業務をしていましたが、その頃から数年がたち、保険調剤薬局・在宅業務を取り巻く社会全体が変化してきているように感じました。
「超高齢社会」となり、保険調剤薬局は外来業務だけではなく、在宅業務が欠かせないものとなっています。今や薬局はコンビニよりも多く、患者さんからすればとても身近な存在となっています。その中で私達薬剤師は患者さんの状態をフォローし、医師を始め他の医療従事者にフィードバックすることで多剤併用、薬剤性有害事象の回避、またポリファーマシー対策にもなります。
シンポジウム1を聴いて、在宅業務には他職種連携が不可欠であることを再度認識しました。薬局という小さな場所に居るとなかなか感じる事のない事ですが、患者さんを取り巻いて色んな職種の方がいます。他職種の方を巻き込み、患者さんにとってより良い生活ができるよう薬剤師も考える事が今後の課題だと感じています。
ポスター閲覧では「視力低下患者に対する在宅訪問における服薬管理の適正化」が興味深かったです。躁うつ病を患っている患者さんの状態をこまめに把握することで、減薬提案を行い、また飲み間違い防止のためにテープを貼るなどして、コンプライアンスの向上に繋げるなどアイデア満載の発表でした。
ポリファーマシーが近年話題になっています。今回の学会でもそのワードが幾度と出ていました。
高齢者は複数の疾患に罹っており、その分使用する薬剤が増える傾向にあります。その事が結果医療費の増加にも繋がっています。在宅に限らず、ポリファーマシー対策・減薬など、今後の仕事でできるところから始めていきたいと思います。
横山 弥寿代(北野調剤薬局桜ヶ丘)
この度、2019年7月14日から15日にかけて、名古屋国際会議場で行われた、日本在宅薬学会第12回学術大会、地域包括ケア時代の「在宅薬学」〜その行動で目の前の地域医療が変わる〜 に参加したので、ご報告いたします。
薬機法改正で、薬剤師は薬を渡すまでではなく、服用後の患者さんの状態をフォローすることが義務づけられるようになる。そのためには何が必要か。そのヒントになる有意義な学会であった。以下に、今回印象に残った演題を紹介する。
大会会長講演「地域包括ケア時代の在宅薬学」
今回の大会会長は当学会の理事長の狭間研至氏である。狭間氏は外科医として診療に従事後、実家の薬局の経営、地域医療の現場で医師として診療をする傍ら薬剤師の職能向上のためにこの学会を立ち上げ、バイタルサイン講習会など薬剤師生涯教育に努めている。薬剤師が地域包括ケアシステムのなかで、他職種と連携しながら本来の職能を発揮するためには、服用後の患者さんの状態をフォローし、薬学的知見からアセスメントして、医師や、看護師などにフィードバックすることが必要になる。この薬学的知識こそが「在宅薬学」ではないかと言っていた。
一般演題(口頭) 薬剤師の施設訪問と医師への処方提案の取り組み〜 ICTを利用した情報収集と連携〜 エム・エス経営企画 サンヨー薬局 竹内孝明
積極的に医師へ処方提案を行うには、情報収集が重要と考え、往診同行や、晴れやかネット(岡山県)の活用、電子カルテの閲覧といった情報通信技術(ICT)の利用を積極的に行っている。しかし、医師の訪問診療への毎回の同行は時間的な負担も大きい。そこで、ICTを介した情報収集が、訪問診療と比べて、処方提案に対して有効かどうかを比較し、同等の結果が得られたことを報告していた。多摩市ではICTがそれほど進んでいない。ICTが進めば、往診同行を行っていない在宅でももう少し積極的に処方提案が行えると感じた。
一般演題(ポスター) 下肢浮腫・傾眠によりADLが低下した患者において、薬剤師の介入によりADLが改善した症例 仙台調剤薬局 あすと長町店 續哲之
患者さんのADL低下の原因が副作用であり、薬学的知見に基づき薬剤の変更、減量を医師に提案し、それにより状態が改善した1例を紹介。下肢浮腫がアムロジピンの副作用ではないかと考え、シルニジピンに変更した結果浮腫が改善。傾眠は腎機能が低下しているため、メマリーの容量を減量したところ改善したとのこと。アムロジピンなど多くのカルシウム拮抗薬はL型カルシウムチャンネルに作用するが、シルニジピンはL/N型に作用し、L型のみのものより、浮腫の副作用が少ないことによると考察していた。患者さんに起こっている変化は実は薬剤性であるかもしれない。選択する薬剤により、本来の効果だけでなく、ADLの改善もおこなえると感じた。
緩和療法における進化するMohsペースト(シンポジウム)
Mohsペーストとは、がん性創傷に対して行うMohs療法に使用する、塩化亜鉛と亜鉛華デンプンからなる院内製剤である。このシンポジウムでは、Mohsペーストの特徴や問題点、製剤の改良、WOC認定看護師による実際の使用方法、形成外科医によるMohs療法についてなどを聴くことができた。在宅の現場ではまだまだMohs療法がおこなえる環境でないことがわかったが、在宅で終末期を迎えるがん患者さんがこれから増えることが予想されるため、薬局薬剤師も知っておかなければならないと感じた。
がん性皮膚潰瘍の治療意義とロゼックスゲルの位置付け(ランチョンセミナー)
ロゼックスゲルは、特に乳がんに高い頻度で発生するがん性皮膚潰瘍の臭気を、主成分のメトロニダゾールで抗菌的に改善する外用薬である。この商品が販売されるまでは、病院薬局製剤として調整使用されていた。演者は病院勤務時に、メトロニダゾールの調整から使用までに係わり、この製剤が標準治療薬として必要と考え、市販化に向け尽力された。がん性皮膚潰瘍の臭気は、患者さん本人だけでなく、その家族のQOLも低下させてしまうため、治療は必要であると感じた。ただし、ロゼックスゲルはがん性皮膚潰瘍の臭気改善薬ではり、皮膚創傷の出血を止める効果はなく、在宅の現場で適正使用が求められる。使用方法を熟知することにより、今後の現場で生かせると感じた。
薬の服用後のフォローには、薬剤師としての専門知識と経験が当然必要であるが、最新の知見を学ぶことや、他の薬局、医療機関での症例を知ることにより、身近に起こっている事の解決につながると感じた。今回の学会参加を今後の業務に生かしたい。
桂井 絵美子(北野調剤薬局桜ヶ丘)
今回学術大会に参加させていただき他職種連携について改めて考える良い機会になりました。
在宅訪問を行っていく中で薬剤師の役割について悩むことが多々あります。
例えばコンプライアンス不良の患者さんの場合、服薬状況の報告・残薬調整の依頼・飲み方の提案などを医師に伝えたり、服薬介助を実際に行っているヘルパーさんへのサポートなどをケアマネージャーさんを通して行っていますが、実際には2週に1回訪問する薬剤師よりも週2回入っている訪問看護師の方や毎日患者さんに接しているヘルパーさんの方が状況を把握していることが多く、そこから医師に報告が行き処方変更等で服薬状況を知ることも多くあります。そのような場面に遭遇すると薬をお届けするだけになってはいないかと感じることがあります。
参加したシンポジウムで訪問診療医から、入院と違い在宅療養では患者さん個々のパーソナリティを重視し、本人の希望・生活環境を考え治療方針を決めていること。短い診療時間内ではわからないこともあるので薬剤師や看護師からの報告内容が参考になると言う話を伺いました。私は、薬剤師は薬に関して全て把握していないといけないのではないかと思い把握できていない事に悩むこともありましたが、この話を聞き他職種で情報を補完し合いケアしていく事が患者さんにとっての利益に繋がるのだと気づかされました。これまで患者さんのために何をするかよりも、薬剤師としてやらなくてはいけないことばかりに目が行っていたような気がします。
また他の薬局で行っている訪問指導も参考になりました。医師の訪問診療に同行し治療方針の把握、その1週間後に再度訪問を行っているとの事で処方変更があればその効果や副作用のモニタリングが可能であること。入院になった場合、病院の薬剤部に在宅療養時の薬剤管理情報を提供し連携していると言う話も聞きました。
コンプライアンスや体調不良の患者さんには毎週の訪問も有益だと感じますし、初回訪問した際情報と実際に服用している薬が違うこともあるので薬薬連携の必要性も感じます。
他にもケアマネージャーからは、どのような情報を薬剤師から得えたいかを知り情報提供書を作る際の参考になりました。歯科医や歯科衛生士から嚥下障害の実情や薬を口に入れても飲み込めていないケースが多々あることを知り、薬の容器が空になっているだけでは服用状況を正確には把握出来ていないのだと実感しました。
職種によって患者さんの見ている視点が違うこと、その様々な視点が合わさって一人の患者さんのケアが作られていることを再認識することが出来ました。ケアの一角を担うためには知識の習得も必要であるし、苦手としているコミュニケーション能力を高めなければいけないと思いました。
今回学んだことを今後の業務に役立てて行きたいと思います。
高橋 敦範(ハートフルファーマシー)
私にとって今回学会に参加することは初めてでした。在宅医療はもちろん普段の外来業務において薬剤師としてどういうことが必要なのかを勉強できた貴重な時間を過ごすことが出来ました。
現在は個人在宅もやらせていただき、毎日色々な性格を持つ患者さんと接して、大変勉強になる日々を過ごしております。最近精神科の患者さんの在宅医療を担当することになりました。その患者さんは多くの薬を服用しているため、過鎮静がかかっており、ろれつが上手く回らない状態です。薬局にも精神科の患者さんは来局されていますが、今まではただ薬を渡して終わりになってしまっていた部分が私の中にありました。今回の学会で精神科の知識をしっかり吸収し、薬剤師として成長したいと思っていました。そこで精神科系をテーマにしたシンポジウムに参加しました。
まずはどのように患者さんと接することが重要なのか、患者さんとのコミュニケーションの取り方についてのシンポジウムに参加しました。まず重要なのは患者さんの病気についてしっかり理解することが大切であることです。とても初歩的なことに聞こえてしまうかもしれませんが、患者さんと接して受け入れてもらうにはとても重要なことです。患者さんも色々な人がいるため1人1人接し方が違ってくるのは当然です。1人の患者さんに受け入れてもらえたから別の患者さんにも同じようにすれば受け入れられるわけではありません。受け入れてもらえない理由は患者さんによって変わってきます。大切なのは無理強いをせず、理由を1つずつ確認して解消していくこと、また薬剤師は患者さんに心配している信号を送り続けることで患者さんに分かってもらうのを待つことの重要性を理解しました。在宅医療にしても普段の外来業務でもまずは患者さんに受け入れてもらわなければ何も始まりません。まずは患者さんの病気について知り、患者さんの話に耳を傾け共感し、それから患者さん1人1人の性格によって色々な方法で患者さんと交流し受け入れてもらうことの大切さを学ぶことが出来ました。
他にも在宅医療の介入により患者さんのアドヒアランス維持を保っていくことの大変さもシンポジウムを通して学びました。入院中は生活リズムが一定であり、服薬管理も病院スタッフが行っているため、徹底されています。しかし退院すると生活リズムも服薬管理も患者さん自身で管理していくことになっていきます。薬も一包化はされているが多くの薬を服用しているため、自身での服薬管理はとても困難です。そこで薬剤師の出番です。上記のことに注意しながら患者さんのアドヒアランスを維持させていくこと、さらに患者さんの状態に合わせて薬の増減・追加・中止について、薬剤師の意見を医師に伝えることが今後在宅医療をやっていくうえで重要であると、今回の学会を通して感じました。
学会を通して精神科の患者さんとのコミュニケーションの重要性、在宅医療をやる前に患者さんから信用を得ることが大切ではないかと感じました。患者さんの中には知らない人を自宅に入れることに抵抗を感じている人も少なからずいるはずです。そのような患者さんの在宅医療に介入するためにはまず信頼を得ることが薬剤師として大切です。在宅医療に限らず普段の外来においても信頼を得ることは重要だと思います。定期的に薬局に来局している患者さんから信頼を得ることが出来れば、かかりつけ薬剤師としての一歩を踏み出せる可能性にもつながるのではないかと感じました。そして今後私は現在担当している精神科の患者さんから信頼され、さらに薬剤師として知識を深め、患者さんの状態に合わせた処方提案をしていくことで過鎮静を改善し不自由のない日常生活を送れるための手助けをしていけたらいいなと感じました。
高橋 和行(北野調剤薬局高尾店)
地域包括ケア時代の「在宅薬学」~その行動で目の前の地域医療が変わる~
在宅薬学会の学術大会には初めて参加したが、数多くの貴重な講演を聴くことが出来、大変有意義な2日間だと感じた。
大会会長講演では狭間研至先生から、薬剤師が処方時に服薬指導を行うだけでなく服薬後の薬学的なフォローをもっと行うべきだという意見・指摘があった。背景として既に求められている残薬問題やポリファーマシーの問題だけでなく、医師の過労の問題があげられ、今後はより診断と処方の部分の負担軽減のために薬剤師が責任をもって情報提供することが求められるという内容であった。そのためには薬剤師が今以上に知識と技能を習得しなければならず、また薬剤師以外のスタッフに一部の業務を移行できるよう見直していく必要もあり、調剤補助という位置づけについて取り入れていくことの重要性を感じた。
基調講演では経産省・厚労省の江崎禎英様から、人口構造や疾患性質が変化していくなかで、社会経済システムを見直すべきであるという意見があり、今後薬剤師や医療関係者だけでなく社会全体で考えるべき方向性が示され、生活習慣病の予防のために身近なところから自分たちの働き方についても考えなければならないと感じた。
特別講演では厚労省の田宮憲一様からも、地域包括ケアシステムの中で対人業務をより充実させ、患者様のかかりつけ薬剤師として服薬後のフォローなど薬物療法の結果に責任を持つことが期待されるとの話があった。
その他にも精神疾患関連のシンポジウムでは、再入院予防のためのAIを用いた対策や看護師の視点でのコミュニケーションの取り方、臨床心理士・公認心理師のかかわり方、薬剤師の在宅訪問での減薬成功例、行政の立場からの見解など様々な職種からの発表を聴き、今後増えると思われる精神科在宅医療で自分たちがまだまだ出来ることがあると感じた。
感染症対策のシンポジウムでは、入院期間の短縮により早期に退院したり、感染管理上あまり望ましくない住環境の中で在宅医療を受ける患者様の対応をする上で注意すべきことについて学んだ。高齢で体力や免疫力が低下している患者様の訪問時には自分たちが貰わない・広げないために十分配慮する必要があると感じた。
全体を通して感じたのは、在宅医療という切り口ではあるがすべての業務に共通して必要な考え方が多く、今後薬剤師がどのように職能を発揮していけるのかという可能性だった。より一層勉強して知識を磨く必要があり、責任が重くなることへの覚悟が必要になる。今回の2日間でもっと患者様のためにできること・やるべきことが自分の中で明確になったのではないかと思う。
貴重な勉強の機会とおいしい名古屋飯をありがとうございました。
小林 瑞美(あい薬局)
Mohsペーストを在宅の場で使用する手立てがあるかを学びたいため日本在宅薬学会へ参加した。というのも、乳がんによるがん性創傷があり、出血や浸出液による患者・家族の負担が大きくなっている方を担当させていただいているからである。
今までは大学病院へ通院し処置をしていたが、思うように動けなくなり在宅で主に緩和治療を行っている。最期まで在宅での生活を望まれている患者様に緩和だけでなく提案できることはないか。学会で学んだことを報告します。
『緩和療における進化するMohsペースト』
Mohsペーストは塩化亜鉛を主成分とする製剤である。亜鉛イオンによるたんぱく変性や収斂させる作用を利用し、腫瘍の変性壊死・壊死組織の乾燥固定をさせ、デブリートメントすることで腫瘍を小さくすることができる。塩化亜鉛という試薬を使うため院内製剤としか作られずまた調整後も時間とともに硬化してしまうため院内はもちろん在宅では扱いが難しいものである。
このシンポジウムでは、この問題点を改善しようと試みる病院薬剤師、WOC認定看護師による処置の方法、形成外科医による処置時の疼痛の緩和や実際のMohsペーストの使用方法について学ぶことができた。
現状では経験を踏んだ医師が在宅医としているのか。保険薬局で試薬である塩化亜鉛を扱う製剤を倫理的に提供できるのか。など数多くの問題が存在し在宅で使用することは難しいと感じた。
ただ、このなかでWOC認定看護師によるがん性創傷の日常的な管理のなかより、いくつか持ちかえり提案できることがあった。
担当患者様はメロリンガーゼを自費使用しており、浸出液が増えている現在では交換回数も多く経済的にも大きな負担となっていた。
安価なワセリンを併用使用することにより固着を防止し剥離刺激による出血や疼痛を軽減することが可能となる点。
高吸収のドレッシング材のかわりに母乳パットを併用することで安価に抑えることもできる点。高価な医療材料に代わる手立てがあることを学ぶことができたことはとても大きな収穫であった。
薬剤師としては保険適用のできる医療材料に目が行きがちであるが、代用できるものを探すことも在宅医療では必要なことであると改めて実感をした。
担当患者さまの苦痛を減らしていけるように、疼痛コントロールだけでなく、薬剤師として・人としてできることはすべてしていきたいとそう思った。
今後、Mohsペーストが市販化され在宅で最期まで過ごせる患者様が増えることを期待したい。
『在宅業務をどのように外来業務に落とし込むか』
2日間の日程を通し考えたことである。
薬機法・薬剤師法の改正により、「服用期間中のフォロー」が義務付けられることが予定されている。
現状、外来窓口で投薬をした患者様に服用状況を尋ねるのは、次回の受診時である。
受診から次回受診までは患者様・家族にお任せというのが大半ではないだろうか。
在宅業務では、常にチームで動いているためケアマネージャー・ヘルパー・訪問看護師・デイサービス職員・リハビリ職員など情報を交換し、刻々と変わる状況やコンプライアンスなどを共有することができ、対策をとることができる。
今後は外来においても、在宅同様に多職種との連携が必須と強く感じた。
それはただ単にケアマネジャーやケアプランの有無・利用サービスを把握することではない。患者様を薬だけから見るのではなく、生活全体を見ていく必要がある。
「ひととなりを理解したうえでかかわりを持つ。」在宅訪問の基本である。それは在宅だけでなく外来でも同じである。
在宅業務を外来業務へ落とし込むために私ができることは何か。
ありきたりの答えになるが、在宅業務を通して得た経験を在宅業務経験のない方に伝えていくこと。
そして誰もが外に出ていきやすいように、在宅業務を難しく考えるのではなく気楽に行えるように環境を整えることである。
多くの薬剤師に在宅業務を経験してほしいと思う。
また、薬局を患者様が「ふらっと」遊びに来ることができるようにすること。
薬局をたんなる薬の受け渡し場所とするのではなく、生活の一部に存在する場所となるように、地域に開かれた場所になるよう「ほっとカフェ@あい薬局」の活動を続けていきたいと思う。
個人プレーにならないように。チームプレーができるように。改めていくことが必要であるとこの2日間を通して猛省をした。
最後になりますが、日本在宅薬学会参加という貴重な経験をさせていただきありがとうございました。
町田 みのり(あい薬局)
早く正確に調剤し分かりやすく丁寧に説明をする。今はそれだけの薬剤師が求められる時代ではないと改めて痛感させられた。薬剤交付後の体調変化の聞き取りをした上で患者さんへ適切なアドバイスをする、医師への処方内容の提案等する、今回の学術大会で、患者さんの健康管理に踏み込める薬剤師になるには、また育てるにはどうすれば良いか考える機会となった。
第一に薬剤師としての知識を増やすこと。机上の勉強も大切だが、今回の学術大会のように実際に現場で経験を積んだ方の生の声を聴いて得た知識はすぐに現場に活かすことができる。今回特に褥瘡治療に関してのお話しを聞いて褥瘡の患者さんへの対応をイメージとして捉えることができた。
第二にどんなことでもよいので調べて、形にして、発表をすること。そこまでして得た知識は自信をもって患者さんや多職種の方へ提案することができる。どんな形でもよいので調べて発表する機会を増やしたい。具体的にはグループ内の合同勉強会開催、私個人的には来年の学会でのポスター発表や、ホームページのハートフルレターの更新に携われないかと思う。
第三に多くの経験を積む。分からないこと、難しいこと、面倒なことに積極的に手を出すような薬剤師を育てたい。新人薬剤師は避けてしまいがちかもしれないが、分からないことを周りの皆でサポートする雰囲気を作り、より多くの経験を積ませることで大きく成長できると思う。
第四に薬剤師が対人業務に専念できるような体制作りをする。業務を回すことを意識しすぎて患者さんの体調の変化に気付かない、処方変更の説明だけして本当にその処方変更でよいかを考える時間もない、そのような業務体制になっていないか見直して、一人一人の患者さんの処方に丁寧に向き合える業務状況にしたい。薬剤師の働く場を調剤室から患者さんサイドに移していかなければと思う。
在宅薬学大会であったが、実際に参加して在宅だけでなく外来業務においても生かせる内容が多い印象を受けた。実際に在宅介入し減薬につながった事例、患者さんのアドヒアランス維持にどう取り組むか検討した事例などを目の当たりにすると、より一層これから必要とされる薬剤師像を具体的にイメージできた。今の自分の未熟さに危機感を感じるとともに、今後、薬剤師としてのスキルを向上させたいと強く思えた二日間となった。このような貴重な機会を与えてくださったことに感謝し今後の糧にしたいと思う。
髙橋 透泰(北野調剤薬局桜ヶ丘)
私は、去年の5月から在宅活動をさせて頂いています。それから1年が経ち、様々な患者さんと接することが出来ました。そこで思うことは、患者さんのために薬剤師としてどんなことが出来るだろうという事です。今回の学会では、在宅での活動の幅を広げるヒントになるものがあればと思い参加しました。
学会では狭間研至大会長講演から始まり、2日間に亘り薬剤師のお話はもちろんのこと、医師や、看護師や市の職員の方など、在宅医療に関わる様々な職業の方のお話を聞く事が出来ました。
その中でも特に興味を持った話が2つありました。まず一つ目は、褥瘡治療に積極的に介入し、医師から治療にかかる期間が短縮したと感謝の言葉を頂いたというお話でした。具体的には、医師の褥瘡診察に同行し、外用薬の適正選択・使用などの薬剤師の目線からなる薬物治療法である「フルタメゾッド」を基に、医師に薬剤選択などの助言をし、看護師・患者さん、患者さんのご家族などに外用薬の使用法を直接指導し、褥瘡の状態を薬剤師目線で評価し、治療に関わるスタッフと情報を共有するというものでした。私も、褥瘡の患者さんを担当することがありましたが、その時は知識が無く、医師に治療に介入させて下さいとも言えず、適切な使い方を指導することも出来ず、ただ処方された薬を渡すだけになってしまっていました。お話を聞かせて頂き、勉強不足であることを痛感させられました。今後はもっと知識を付け、治療に参加させてもらえるよう医師や看護師さんと信頼関係を築いていきたいと思います。
二つ目は、医療連携のお話でした。定期的に地域の在宅に関わる方で勉強会を開催し、日ごろから色々な業種のひとと顔を合わせることにより、いざという時に気軽に連絡を取りやすく、連携がとり易くなる。薬剤師には「顔(多くの人と顔なじみになる)」「腕(能力)」「心(患者さんを思う気持ち)」「足(フットワークの軽さ)」の4つが重要なので、それを心掛けて薬局の外に飛び出そうというお話でした。やはり、あまり話した事がない方と、いきなり連絡を取り合うのはハードルが高いので、今回のお話の様に地域の集まりや、担当者会議にフットワーク軽く積極的に参加し、あらかじめ顔が見える関係性を作り、様々な職種の方と今まで以上に連携をとっていきたいと思います。
今回はこのような学会に参加させていて頂ける機会を作って頂きありがとうございました。この貴重な経験を無駄にせず、日ごろの在宅業務で生かしたいと思います。
小山 くるみ(ハートフルファーマシー サザンスカイタワー店)
私が在宅医療に関わって3年間。業務に関わった当初は、入院するほどではない患者さんが家で療養するためであったり、また外来受診が困難な患者さんのために家まで訪問するといった事が在宅業務の一番の目的と思っていました。しかし、超高齢化社会を生きる私たちにとって、在宅医療は1人1人の患者さんが「どう生きてどう死にたいか」という事に大きく関わっている仕事だと考えるようになりました。
「住み慣れた場所で最期まで」これは日本在宅薬学会理事の狭間先生が地域包括ケアシステムを具現化するためにテーマとしていることです。医療が病院完結型から地域完結型へシフトしていくと同時に、薬剤師を取り巻く環境、求められる調剤業務も大きく変化してくるだろうなと感じました。狭間先生の講演の中で、医師は通常、患者さんの訴える症状に対して処方を考えるため、その患者さんが訴える症状が薬の副作用かもという考えまでにはなかなか至らず、薬を更に処方してしまうためポリファーマシーの要因にもなっており、これらポリファーマシーの是正は薬剤師にしかできない仕事とおっしゃっていました。また在宅医療は患者さんの生活に大きく関わってくるため、どこまでが薬剤師の仕事で、どこまで患者さんと関わり、そしてどこまで薬剤師が関与していいのかをよく悩みます。薬剤師にしか出来ない仕事を納得がいくまで行うためには、病診連携、診診連携、薬薬連携、医介連携などの多職種連携が必須であり、もし困ったことがあったときは、医師、看護師、地域包括ケアセンター、他職種の方々に頼るということも大切なことだと感じました。
この他に心不全パンデミックを在宅医療で阻止するという講演がありました。私が現在、担当している患者さんは心房弁膜症と心房細動があり、在宅酸素療法(HOT)を行なっています。心不全の診断と重症度評価に用いる、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)は1万を超えており、慢性心不全と診断されています。HOTの管理や服薬管理で体調は落ち着き、現在はBNPも6000まで改善しています。心不全とは心息切れやむくみが起こり、身体活動性が低下していき、やがて生命を脅かす進行性の疾患と定義されています。心不全全般の再入院の要因は、医学的要因よりも、水分・塩分管理や服薬管理の不徹底、過労などの非医学的要因による再入院率が高くなっています。在宅訪問することで患者さんの生活背景を確認し非医学的な要因の再入院を食い止めることができるため心不全の在宅医療は今後より重要になっていくと感じました。訪問医からは「薬剤師も今後は専門の領域を持つようになるかもしれないね」と言われています。せめて、担当している患者さんの薬については、1番のスペシャリストでいたいと思います。
このような普段学ぶことのできない貴重な機会を作っていただき、ありがとうございました。今後の業務に活かしていきたいと思います。